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日記

2020/12

2020年12月4日

エル・アルコンー鷹ー

――鷹は大阪の梅田に舞い降りて、8日ほど万来の観客を魅了し、深い余韻を残して飛び去りました――

コロナ禍の下、重症化リスクが高いとされる高齢者の私ですが、用心深く緊張感をもって大阪へ遠征し、梅田の劇場で二回、帰京して渋谷の映画館で千秋楽をライヴ中継で観劇しました。
地方公演仕様のため、人員も舞台装置も音響も、13年前の初演時のスケールには及びませんが、それらを補って余りある、星組の皆様の熱気溢れる演技と歌唱が素晴らしく、コロナ禍も忘れてひたすら舞台に見入ってしまいました。

ティリアン役が念願だったという礼真琴さんは凄味のある存在感で、演技を感じさせない自然な成りきりは、まるで彼が憑依したかのよう。孤高の反逆児の心の襞まで見事に表現されて圧巻でした。礼さん、最高です!!
美しい女海賊の舞空瞳さん。気高く凛々しくやがて哀しい女心が、切々と伝わってきて素敵でした。
歌唱力抜群の礼さんとのデュエットは聞き応え満点。白い衣装の二人の終幕は万感胸に迫り、もう泣くしかないという美しさ。

愛月ひかるさんは、豪商の子息らしい品の良さがレッドっぽくて爽やかな好青年。以前ラスプーチンの怪演が印象的でしたが、正義の海賊もぴったりですね。

初演時からの白妙なつさん、専科に移られた万里柚美さん、そして新生星組の皆様が各々の役柄を熱意をもって生き生きと演じる姿には、この作品への愛が感じられて感慨無量でした。原作者として本当に幸せな公演観劇でした。

宝塚を見た後に原作漫画を読んだ人が違いに驚くらしいので、自分でも何年かぶりに単行本を読み直し(描いたのは43年前)、徹底したハードボイルドに仰天。ティリアンの陰謀は体を張った大仕掛けで、彼自身も血まみれボコボコ、水漬けになって死にかけたり、最後は壮絶に木っ端微塵。ギルダは零落の身で路上で犬死に。我ながら容赦ない話です(^^;
このような男性原理の殺伐とした物語を、女性専科の宝塚の舞台に向けて再構築して下さった作・演出の齋藤吉正先生には、改めて心より感謝申し上げます。
寺嶋民哉先生作曲の印象的な名曲の数々と共に、紅涙を絞りロマン溢れる作品として残して下さいました。原作者冥利に尽きる思いです。
13年前の安蘭ティリアンに礼さんが憧れたように、今回の礼さんに憧れる少女が客席にいたとしたら…?
いつの日か、鷹が再び飛来する時を夢見つつ…。


コロナ禍のストレスで士気が失せ、ブラックホールにはまった気分が続いていますが、宝塚公演の熱気とエネルギーに接して、何とか這い上がるべく頑張ろうと思います。
次の作品をどうぞ気長に待って下さいますように、よろしくお願いいたしますm(._.)m
マスク・手洗い・3密回避を徹底して、皆様もご健康をしっかり守って下さいね。