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日記

2007年12月17日

ヒート・アップする宝塚版「エル・アルコン」

今月の15日が宝塚大劇場での千秋楽だったので、東京から日帰り出張してきました。
しばらく間が空いての観劇でしたが、心底驚きました。舞台とはこれほど進化し続けるものとは!
みなさんの演技が凄みを増して、舞台から火花が散るような迫力でした。キャラクターをくっきりと彫り込んでいくというのでしょうか。ティリアンもギルダもレッドも、この人以外にはあり得ない、というほどの力強い存在感で迫ってきます。熱気ばかりではなく、例えばギルダの部下の微妙な心理もきっちり表現されていて、舞台の隅々までにも目が吸い寄せられてしまう、有無を言わせないパワーが溢れていました。そして、歌い込んでますます伸びやかな歌唱力。歌声だけで、もう涙。やっぱりティリアンは何度死んでも涙でした。自分の原作をこんなに素晴らしい舞台にしていただけるとは、漫画家冥利に尽きる思いです。星組のみなさん、本当にありがとうございます。東京公演は、もっと凄い事になるのではないかと、今から楽しみでなりません。どうぞ頑張ってくださいね。斉藤先生、よろしくお願いします。東京公演の初日は来年の1月2日。読者のみなさんもぜひ観てください。本当に凄いですから。すでに星組の回し者になってしまったかも(笑)。

2007年11月8日

ベルンハルト作戦

今朝の日経新聞の「春秋」欄に、ナチス収容所で偽札作りに携わった生き証人の来日の事が書いてありました。ヒトラー政権が敵国米英の金融システムを破壊するために、偽造紙幣を大量に作らせた「ベルンハルト作戦」です。27年前に描いた「エロイカ」の「アラスカ最前線」は、この作戦を題材にしたものだったので、ふと感慨に耽ってしまいました。いろいろな題材を探し出して娯楽作品に創作するのが私の仕事ですが、現実の重さは忘れてはならないと思ったことでした。そのスロバキア出身のユダヤ人の方は現在90歳だそうです。

一昨日、プリンセス2月号の企画のインタビューと取材の仕事で、宝塚まで日帰り出張してきました。音楽学校や劇場内や新人公演のお稽古場風景などを見学させていただきました。いつもお世話になっている岡野プロデューサーが会うたびにスリムになっていくので、激職のほどがしのばれます。くれぐれもご自愛ください。演出の斉藤吉正先生には、いろいろ突っ込んだお話が伺えてとても楽しかったです。毎日が勝負という舞台の世界では、気の休まる暇もないのでしょうが、どうぞ頑張ってくださいませ。
それにしても、鍛え上げ磨き抜かれたトップ・スターさんの輝きには、毎度圧倒されるばかりです。凡人には別世界の人々。緊張しまくりの不慣れなインタビューにも快く応じてくださって、ありがとうございました。原作者も裏方の一人として、一般の読者にも宝塚版「エル・アルコン」を楽しい取材ルポで紹介したいと思います。掲載号はお正月発売ですが、「アルカサル」外伝がどんと控えているので進行は早めです(汗)。

「エレガンス・イブ」の日常報告コミック・エッセイがなくなったので、なるべく日記を書くようにしています。仕事が忙しくなって書けない時はお許しくださいね。

2007年11月5日

少佐と伯爵のクリスマス編

宝塚初日報告を長々と書いてしまったので、番外編のことを書く余裕がなくてすみません。今月6日(明日です)発売のプリンセス12月号に「エロイカ」の番外編が掲載されますので、どうぞお忘れなく。久しぶりの少佐と伯爵の45ページですが、シリアスな「アルカサル」の後なので、大いにはめをはずして描いてみました。もちろん番外編の定番男ロレンスもおちゃらけて登場。奇人変人ご老人の競演する、ロマンティックとはいえないクリスマス物語(笑)を楽しんでくださいね。
この後は、プリンセス・ゴールドの方で始める「アルカサル」の外伝の連作に取り掛かります。今年はいろいろギア・チェンジが忙しいですが、頑張って仕事しまっす。

2007年11月4日

安蘭ティリアンは絶品です!

一昨日、宝塚星組の「エル・アルコン」の初日に、K島編集長とU木さんと宝塚大劇場へ観劇に行ってきました。自分の作品がどのように舞台化されているのか、幕が上がるまで期待と不安でかなり緊張していましたが…。主役の安蘭けいさんの演技力と歌唱力に完全に脱帽しました。素晴らしいティリアン・パーシモンです!重厚な衣装が大変よくお似合いで、長い黒髪もドレープの綺麗なマント姿も立ち振舞いも美しく、何より目ぢからの強さがティリアンそのもの。ご本人も漫画のイメージを壊さないように努力されたそうですが、情熱的でクールでストイックな彼の複雑な性格が見事に表現されていて、圧倒的な存在感に魅了されっぱなしでした。漫画のファンの方々にもイメージ通りの、生きてそこにいるティリアンを、ぜひ観に行っていただきたいと思います。
ギルダ役の遠野あすかさんは、女海賊の凛々しさと愛憎相半ばする女心を気高く演じて美しいし、レッド役の柚希礼音さんは、ちょっと甘さの残る爽やかさで敵役との対比を際立たせる好男子ぶり。ニコラス君はいじらしくて可愛いし、K島さんとU木さんはキャプテン・ブラック萌えでした(笑)。劇団員の方々全員の熱気がしっかり伝わってくる演技の数々と、スペクタクル感溢れる音楽と印象的な主題曲と、お金がかかったであろう舞台装置で「エル・アルコン」の世界が繰り広げられるうちに、終盤のティリアンの爆死シーンで、私は思わず落涙してしまいました。原作者が泣いてどーするですが、本当に感動しました。これで最終シーンの白い衣装のティリアンとギルダが、一緒にちょっと踊ってくれたら、もう感涙にむせんだだろうと思うほどでした。
初日の舞台を観終わった時、三人とも「もう一度観たい」と言い出すただのミーハーおばさんと化して(笑)、翌朝の帰京の予定を遅らせて二日目を観劇し、初日よりもっとすごい事になっているので、舞台は生き物だなあと感銘し、爆死シーンに、またもや涙を流す私だったのでした(笑)。
正確には三本の物語が1時間30分の中に入っているので、舞台の展開は大変スピーディーでエネルギッシュです。宝塚のお約束事などをふまえつつ、原作のイメージにこだわって劇化をしてくださった斉藤吉正先生、本当にご苦労様でした。漫画ファンには、観たいシーン満載の嬉しい舞台になったと思います。舞台を支えているスタッフの方々にも感謝感激です。立派な舞台にしてくださってありがとうございます。これから12月15日までの長丁場、皆様どうぞ頑張ってくださいませ。そして、来年1月2日から東京公演。漫画・出版関係者たちもとても観たがっていますので、今から楽しみに待っています。読者の方々もぜひ、魅力的な安蘭ティリアンを観に行ってくださいね。

2007年10月2日

スペインの二人の尼僧たち

「アルカサル」の取材で訪れた、アストゥディージョのサンタクララ尼僧院との交流は、「修道士ファルコ」の巻末に描いたので、読者の方もご存知かと思います。
先日、完結編の単行本をお二人の尼僧にお送りしたところ、長い間病気療養中だったセリーナ尼僧は、残念ながら、今年の5月に亡くなられていました。19年前に、初めて尼僧院に行った時に、言葉も通じないのに、六百年前の創設者のマリアとペドロ王の話題で盛り上がったことが、今でも懐かしく思い出されます。今は、神の御許で永遠の平安と共にあることと思います。
カナリア諸島のテネリフェのルス尼僧からは、今日、誠意溢れる暖かいお手紙をいただきました。この本を、私達の友情の歴史の証として、尼僧院の図書館に納めてくださるそうです。
ちょうど、漫画以外のことで精神的に滅入っていたので、ルス尼僧の誠実な言葉の数々に、心が洗い清められて、すがすがしい気持ちになりました。やっと完結したペドロ一世の本を、尼僧院の方も共に喜んでくれたのが、とても嬉しいです。セリーナ尼僧は残念で寂しいことですが、いつの日か、サンタクララ尼僧院にお礼参りに行かなければと思っています。

アストゥディージョからはEメール、テネリフェからはワードでした。スペインの尼僧院でも、今やすっかりIT化が進んでいるんですね。
下関の姉たちも、先月の末からパソコン教室に通い始めました。72歳から64歳の4人姉妹で仲良くお勉強中と思っていたら、早くもつい昨日、72歳の長姉からEメールが届いてびっくり。新しい事を勉強するのが面白くてたまらないそうです。さすが我が姉たち、前向きすぎて負けそう。一番若い私としては、自分の本分を全うすべく、雑事に捉われず、漫画の仕事に打ち込むばかりです。